大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)62号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、審決取消事由の存否について判断する。

1  ベツドの上部一側に主軸頭を立設し、その主軸頭の端面部から水平方向にボーリングバーを突設し、そのボーリングバーの先端部に切削工具を放射線方向に突設させた回転頭部を設けた横型中ぐり盤(以下この中ぐり盤を「周知例」という。)が本願考案の出願前に周知であることは、原告の認めるところであり、成立について争いのない甲第二号証によれば、第一引用例には、審決認定のとおり、内面研削工具手前位置に拡開式被加工材内孔壁支持装置を設ける構成(別紙図面・参照)が記載されていることが認められる。

ところで、原告は、第一引用例の拡開式被加工材内孔壁支持手段は発条の反撥力によつて定着片を拡開させるものであるのに対し、本願考案の拡開式被加工材内孔壁手段は油圧によつて軸支持装置を拡開させるものであるから、両者は全く関係のない技術である旨主張する。

しかしながら、審決は、拡開式被加工材内孔壁支持装置は第一引用例に記載されており、本願考案は前記周知例における回転頭部の手前位置に拡開式被加工材内孔壁支持装置を設け、その支持装置を操作するため、ボーリングバーの表面軸方向に長溝を設け、その溝の中に油圧管を埋設したものであると認定しているのであつて、その審決の認定に誤りはなく、本願考案と、第一引用例との相違は加工材内孔壁支持装置に及ぼされる押圧力がばねの弾撥力によるか油圧によるかの違いにすぎず、押圧力を得る手段としてばね又は油圧を利用することは慣用されていることであり、ばねの力を油圧の力に代えることは単なる慣用技術の置換であると認められるから、本願考案における拡開式加工材内孔壁支持装置の操作は第一引用例におけるそれと関係のない技術であるとすることはできない。原告の主張は理由がない。

原告は、また、本願考案の軸支持装置がボーリングバーの外周に直接設けられているのに対し、第一引用例の軸支持装置は、固定基管とは別体の支承管の外周に設けられているから、本願考案と第一引用例記載の考案とは構成が本質的に相違すると主張する。

しかし、仮にそのような相違があるものとしても、そのことの故になぜ本願考案は第一引用例記載の考案とは構成が本質的に異なるものとすべきか明らかではなく、またその相違の故に第一引用例は、本願考案の構成を周知例及び第一ないし第三引用例の記載から、当業者がきわめて容易に考案し得たものとして引用することができないものとすべきものではなく、原告の主張は理由がない。

2  原告は、第二引用例(成立について争いのない甲第三号証)に記載されたものは、ホーニングマシンの噴流式サイズ感知装置に関するものであり、ホーニングマシンと中ぐり盤とはその機能も構成も使用目的も相違し、また、第二引用例の管28に流されているのは機械の冷却用流体であつて、それは本願考案の油圧管9の油とは全く異質のものであり、さらに、第二引用例の管28はロツド26と離れており、ロツド26の表面には長溝を設ける必要性がないから、本願考案と第二引用例とでは考案の対象が全く異なる旨主張する。

しかし、審決は、本願考案と第二引用例とは考案の対象が同一であるとしたのではなく、第二引用例には長尺棒の先端部で所要の作動を行わせるため、棒の表面に長溝を設け、その中に操作用管を埋設することが記載されているとしたものであり、甲第三号証によれば、審決のこの認定はこれを是認することができるから、ホーニングマシンと中ぐり盤とは、その機能も構成も使用目的も異なるとしても、第二引用例に、本願考案と同様、長尺棒の先端部で所要の作動を行なわせるため、棒の表面に長溝を設け、その中に操作用管を埋設した構成が示されているとしてこれを引用することになんらの違法もない。原告の主張は理由がない。

原告は、さらに、第三引用例に記載されたものは、回転砥石による精密内面研磨機であつて、本願考案の中ぐり盤とは工作機械としての機能も構成も使用目的も相違し、その連動軸26は砥石等の加工具に動力を伝達するものであり、本願考案の被加工材内孔壁支持用の油圧管とは全く異なる旨主張する。

しかし、中ぐり盤も精密内面研磨機も共に工作機械の一種であるから、これらの機械に用いられる手段を相互に転用することに困難性はないというべきであり、また、本願考案の油圧管9は、その先端部を被加工材内孔壁支持装置に連通させたものであるのに対し、第三引用例の連動軸26は自在接手24を介して回転軸23の先端に固定された砥石21を回転させるものである(成立について争いのない甲第四号証参照)が、いずれも長尺棒の先端部で所要の作動を行なわせるためのものである点では両者に差異はないというべきである。

三  右のとおりであり、本願考案は従来周知の技術及び第一ないし第三引用例に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるとした審決に誤りはなく、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は失当であるから、これを棄却することとする。

〔編註その一〕本願考案に関する事項は左のとおりである。

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四七年一〇月二四日、名称を「横型中ぐり盤のボーリングバーに取付けた被加工材内孔壁支持装置用油圧管配設装置」とする発明につき特許出願(特願昭四七―一〇六五四七号)し、昭和五二年一〇月一七日これを実用新案法第八条第一項の規定に基づき、実用新案登録出願に変更した(以下、この出願に係る考案を「本願考案」という。)ところ、昭和五三年九月二八日拒絶査定を受けたので、同年一〇月二日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五三年審判第一六四二二号事件として審理されたが、昭和五六年一月二一日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年二月一二日原告に送達された。

二  本願考案の要旨

ベツド1の上部の一側に主軸頭2を立設し、その主軸頭2の端面部から水平方向にボーリングバー3を突設し、そのボーリングバー3の先端部に切削工具4を放射方向に突設させた回転頭部5を設け、その回転頭部5の手前位置に拡開式被加工材内孔壁支持装置7を設け、前記ボーリングバー3の表面に軸方向に長溝8を設け、その溝8の中に油圧管9を埋設し、前記被加工材内孔壁支持装置7に前記油圧管9の先端部を連通させた横型中ぐり盤のボーリングバー3に取付けた被加工材内孔壁支持装置用油圧管配設装置。

(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

別紙図面(二)

<省略>

別紙図面(三)

<省略>

別紙図面(四)

<省略>

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